襖の張り替えDIY 紙の選び方と貼り方をプロが解説
和室の襖(ふすま)、最後に張り替えたのはいつでしょうか。

日焼けで茶色っぽくなっていたり、引き手のまわりが手あかで黒ずんでいたり、
子どもが開け閉めのときに開けた穴がそのままだったり。
「気にはなっているけれど、業者さんを呼ぶほどでもないし」と、
何年も見て見ぬふりをしている方、かなり多いです。
安心してください。
襖の張り替えは、DIYのなかでもかなり成功率の高い作業です。
むしろ「壁紙を一面張る」よりずっと簡単です。
今日は現場を見てきた立場から、失敗しない襖紙の選び方と、
1枚30分ほどで終わる貼り方の手順をお伝えします。
襖は、家のなかで唯一「素人がプロと同じ仕上がりを出せる」建具です。
襖が汚れる・破れるのは、あなたのせいではありません
まず、襖が傷む理由をはっきりさせておきましょう。
ここを分かっておくと、次に選ぶ紙が変わります。
ひとつ目は紫外線による日焼けです。
襖紙の多くはパルプや和紙が主原料で、日光に含まれる紫外線で繊維が酸化し、
黄色〜茶色に変色していきます。
南向きの和室なら、5〜10年もすれば色が変わって当たり前。
これは劣化ではなく、紙の性質です。
ふたつ目は手あかと皮脂。
引き手のまわりが黒ずむのは、手の脂が紙の繊維に染み込んでいるからで、拭いても取れません。
三つ目が湿気とカビです。
押入れの襖の裏側、めくってみたことはありますか。
黒い点々が出ていたら要注意。
襖は「押入れの空気の蓋」をしている建具なので、室内と押入れの温度差で結露が起き、
下地の紙にカビが回ります。表面だけ張り替えても、下地が生きていればまた出てきます。
四つ目は衝撃による穴。
子どもや掃除機がぶつかった程度で穴が開くのは、
中身が空洞(骨組み)だからで、これも構造上どうしようもありません。
つまり襖の劣化は、使い方が悪いのではなく、素材と構造の宿命です。
だから定期的に張り替える。もともとそういう建具なのです。
襖は「消耗品」だと割り切った人から、和室がきれいになります。
解決の第一歩は「うちの襖は何襖か」を見分けること
ここが最大の分かれ道です。
襖には大きく4種類あり、種類によって使える紙が違います。ここを間違えると、
貼った直後に浮いたり、そもそもくっつかなかったりします。

本襖(ほんぶすま)は、木の骨組みに紙を何層も重ねた伝統的なもの。
表面を指の腹で押すとポコポコとたわみ、
コツコツと叩くと格子状の骨の位置で音が変わります。
軽く、周囲の枠が外せる構造が多いです。
戸襖(とぶすま)は、芯にベニヤ板が入ったタイプ。
押してもたわまず、持つとずっしり重い。
片面が洋室側でクロスや木目になっていることもあります。
段ボール襖・発泡スチロール襖は、比較的新しい住宅や賃貸に多いタイプ。
とにかく軽く、表面は平ら。水分や熱に弱いのが特徴です。
見分けたら、紙を選びます。市販の襖紙は主に3タイプです。
- 再湿(さいしつ)のりタイプ:裏面に切手のような水で戻るのりが付いていて、水を含ませて貼ります。貼った直後なら位置をずらして直せるのが最大の利点。密着もよく、プロが初心者にすすめるならこれです。ただし本襖向きで、水に弱い段ボール襖には不向きです。
- アイロン貼りタイプ:裏の樹脂のりをアイロンの熱で溶かして貼ります。水ものりも使わないので部屋が汚れず、戸襖のような平らな面と相性抜群。温度ムラがあると波打つのが弱点です。
- シール(粘着)タイプ:裏紙をはがして貼るだけ。段ボール襖・発泡襖にはこれ一択ですが、貼り直しがきかない一発勝負。安価な商品だと数か月で角が浮いてくることもあります。
費用はDIYなら1枚あたり2,000〜4,000円程度。
襖紙そのものは幅95cm×長さ180cmの2枚入りで900〜2,000円、
道具類が初回だけ500〜1,500円といったところです。
業者に頼むと片面1枚で普及品でも2,500〜3,500円、本襖に中級以上の紙を使えば4,000〜8,000円かかりますから、4枚あるならDIYの差は小さくありません。
紙のグレードより、「襖の種類に合った接着方式」を選ぶほうが、仕上がりに10倍効きます。
作業手順:アイロンタイプで1枚30分
ここでは扱いやすいアイロン貼りタイプを例に説明します。
再湿タイプも、アイロンを「水を含ませたスポンジ」に置き換えれば流れは同じです。
用意するもの
襖紙、家庭用アイロン、カッター(新しい刃)、はさみ、地ベラまたは30cm定規、マスキングテープ、ペンチ、金づち、千枚通しか釘締め、あれば引き手外し(内装用の小さいバール)。合計でも数千円です。
手順

- 襖を外して寝かせる。敷居から持ち上げて手前に引けば外れます。床に毛布か養生シートを敷き、平らに寝かせてください。立てたまま貼るのは、まず失敗します。
- 引き手を外す。引き手と襖のすき間にバール(なければ薄いマイナスドライバー)を差し込み、少し持ち上げると細い釘が2本出てきます。これをペンチで抜けば引き手が取れます。抜いた釘と引き手は、なくさないよう小皿にまとめておきましょう。
- 下地を整える。穴や破れがあれば、補修紙か厚手の和紙を木工用ボンドで裏から当てておきます。ここを飛ばすと、新しい紙の表面に凹凸が浮いて出ます。カビが出ていた場合は、消毒用エタノールを布に含ませて拭き、完全に乾かしてから。
- 枠を養生する。周囲の襖枠にマスキングテープを貼り、のりや熱で汚れないようにします。この一手間が仕上がりの差になります。
- 紙を仮置きしてカット。襖紙を広げ、四辺それぞれ2〜3cmずつ大きくなるようはさみで切ります。位置を決めたら、動かないよう上辺をマスキングテープで軽く留めます。
- 中央から外へアイロンを当てる。アイロンは中温〜高温のドライ設定(スチームは使わない製品が多いので、必ず紙の説明書きに従ってください)。必ず中央から放射状に、空気を外へ追い出すように当てていきます。端から貼り始めると、必ず真ん中に気泡が残ります。1か所に長く当てず、すべらせるように動かすのがコツです。
- 余分をカット。枠の際に地ベラを当て、その縁に沿ってカッターを走らせます。刃は必ず新品に。切れない刃は紙を切らずに引っ張るので、毛羽立ちの最大の原因になります。
- 引き手を戻す。元の位置の紙に千枚通しで小さく穴を開け、引き手をはめて釘を打ちます。金づちで直接叩くと引き手が凹むので、釘締めを当てて打ってください。
- 半日ほど置いてから建て込む。のりが落ち着く前に立てると、端が浮きます。
安全面の注意です。
アイロンは200℃近くまで上がります。
床に寝かせた状態で作業するため、コードに足を引っかけてアイロンが落ちる事故が現場でも起きています。コードは体の後ろ側に回し、離れるときは必ず立てて電源を抜いてください。
カッターは刃を出しすぎず、必ず体の外側へ向けて引くこと。
襖1枚は意外と大きく、立てかけたものが倒れると子どもやペットには十分危険です。
作業中は部屋に入れないようにしましょう。そして両面が見える襖は、必ず両面同時に張り替えてください。片面だけだと紙の張力の差で反りが出ます。
4枚張り替えれば、部屋の印象は別物になります
今日の内容を振り返ります。
襖の日焼けや汚れは劣化ではなく素材の宿命で、もともと張り替える前提の建具だということ。そして成功の鍵は、襖の種類(本襖・戸襖・段ボール襖)を見分けて、それに合った接着方式の紙を選ぶこと。
これさえ外さなければ、あとは「寝かせて、中央から外へ」の原則を守るだけです。
慣れれば1枚30分、押入れ2枚と部屋の間仕切り2枚の計4枚でも、
休日の午前中で終わります。
費用は1万円前後。それで日焼けした茶色い和室が、真っ白な空間に変わります。
壁紙を張り替えるより手軽なのに、部屋に入った瞬間の印象の変わり方は、正直こちらのほうが上です。
最初の1枚は、押入れの襖など目立たないところから始めてみてください。
1枚貼り終えるころには、コツが手に入っています。

